
ナースコールシステムは、病院や介護施設における安全と安心を支える重要な設備です。ボタンを押すだけで看護師やスタッフと会話でき、患者や利用者の命を守る役割を担っています。一見シンプルに見えますが、実際には制御装置・配線・子機・親機など複数のパーツが連携して機能しており、仕組みを理解しておくとトラブル時に役立つでしょう。
ナースコールの基本構造とは?
病院や介護施設で働く人にとって、ナースコールシステムは欠かせない存在です。患者さんや利用者が困ったときにすぐに助けを求められる仕組みであり、同時にスタッフが迅速に対応するための大切なツールでもあります。ナースコールは「制御装置」「配線」「構成機器」から成り立っており、これらの組み合わせによって機能や導入コスト、利便性が大きく変わります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
制御装置
ナースコールの心臓部ともいえるのが制御装置であり、種類によって導入費用や利用できる機能が異なります。大学病院や大規模な医療機関で採用されており、多く普及しているのは、ナースコールシステムを主な制御装置とする構成です。ただし子機であるハンディナースやビジネスフォンとの連携には、追加の設備や費用が必要となるため、小規模施設にはあまり向いていません。また、ビジネスフォンを制御装置として活用する方式も一般的です。
電話設備をベースにしているためPHSやハンディナースとの相性がよく、呼出や通話が安定しているのが特徴です。小規模の施設にも導入しやすく、拡張性も備えていることから幅広い現場で使われています。
加えて、近年普及してきているのが、新しく参入した会社のナースコールシステムです。機器接続やシステム連携の柔軟さを重視しているため、設計自由度が高く、比較的低コストで導入できることから需要が拡大しています。
配線方式
制御装置とともに重要なのが、配線方式です。ナースコールには「有線」と「無線」があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。有線方式はもっとも一般的で、多くの病院や施設で導入されています。無線に比べて通信トラブルが起きにくく、相互通話も可能な、安定性が高い配線方式です。ただし、各病室や居室からナースセンターまでの配線工事が必須であり、その工期や費用は施設の規模や構造によって大きく変わります。
病床数が多く、ナースセンターまでの距離が長い場合には数か月にわたる工事になることもあるため、導入には慎重な検討が必要です。一方、無線方式は、配線が必要なく、設置場所を選ばないという自由度の高さが魅力です。
ベッドのレイアウトを変えても柔軟に対応できるほか、配線や工事の手間を省き、コストを抑える効果もあります。一方で、通信環境が不安定になりやすく、製品によっては音声通話に対応していないものもあるため、選定時には仕様をよく確認することが大切です。
構成機器
ナースコールシステムを現場で使用するためには、親機、子機、呼出ボタンといった機器が不可欠です。親機は拠点部屋に設置され、各居室や病床からの呼出を一目で確認できるディスプレイを備えています。通話機能だけでなく、患者の基本情報や看護情報を共有する役割も果たすため、チーム医療や介護において重要な機器といえます。一方、スタッフが動きながら対応する際に頼りになるのが子機です。
かつてはPHSタイプが主流でしたが、現在はスマートフォンと連携したタイプも増加傾向です。施設内のどこにいても応答できるだけでなく、内線や外線通話、一斉放送といった機能を利用できる製品も登場しています。
呼出ボタンは、患者や利用者が直接操作する機器であり、病室やトイレなど必要な場所に設置されます。防水仕様やペンダントタイプなど、使用する人の状態に合わせて選ぶのが重要です。
呼出ボタンの種類や代表的メーカー
ナースコールシステムで、患者や利用者にとって重要となるのが呼出ボタンであり、その種類や機能は年々多様化しています。居室用呼出型
各病室や居室に設置された呼出ボタンであり、ボタンを押すとスタッフステーションや携帯端末に通知が届きます。防水型
入浴中やトイレ利用時など、事故が起きやすい環境でスタッフを呼べるように設計されており、耐久性の高さが特徴です。ペンダント型
首から下げて移動できるため、部屋のどこにいてもボタンひとつで呼び出しが可能です。活動的な入居者にとって、安心感を支える大切な選択肢といえるでしょう。特殊な呼出ボタン
自力で強くボタンを押すことがむずかしい人には、腕や足で押せるタイプの呼び出しボタンの導入がおすすめです。手を使えない人でも、軽く触れるだけで作動します。さらに重度の要介護者向けには、息を吹きかけるタイプや触れるだけのタイプもあり、わずかな動作や感覚で反応するため、意思表示が限られている方でも助けを求められます。
センサー型
光センサー感知型は、手をかざすだけで作動し、非接触であるため不随意運動のある方にも使いやすい呼出ボタンです。人感センサー型は、人の動きを検知してスタッフに通知するため、認知症による徘徊や転倒リスクをいち早く察知できます。接触センサー型は、マットや窓に設置して動作を感知する仕組みで、ベッドからの離床などを未然に防ぐのに役立ちます。
ケアコム
ナースコールシステムの業界をけん引してきたのが、1955年創業の老舗企業であり、国内シェアの大きいケアコムです。「PLAIMH NICSS」はスマートフォンとも連携可能で、複数の呼出に対し、優先度を判断できる機能を備えています。さらにIPカメラや生体モニタと接続し、映像やバイタル情報をスタッフ端末で確認できるなど、ICT連携に強みがあります。
アイホン
インターフォン事業で培った技術をもとに、医療介護分野に特化したシステム「Vi-nurse」を展開しています。親機の機能が充実しており、サブディスプレイで情報を可視化したり、位置情報システムと連動したりと、現場の多様なニーズに応える拡張性を誇ります。ナカヨ
通信機器メーカーとして歴史があるナカヨは「電話機一体型ナースコールシステム」で知られています。介護施設や高齢者住宅に適した「NYC-Si緊急呼出コールシステム」は、介護ソフトや見守りセンサーともスムーズに連携し、呼出履歴を記録として残せるのが特徴です。岩崎通信機
PHSやコードレス機器との親和性が高く、比較的低コストでシステムを導入できる点が評価されています。「岩通セーフティケアシステム」は、内線・外線通話を含めたオールインワン型で、病院だけでなく中規模施設にも適した柔軟さがあります。名電通
名電通が提供する「ナースエコール」は、ナースコールと電話を合わせたもので、スマートフォンや見守りシステムとの高い連携性が特徴です。無線・有線のハイブリッド運用が可能で、非常時には有線接続に切り替えるなど、安全性と柔軟性を兼ね備えています。導入コストが従来型の約半額で済む点も大きな魅力です。
目的に合わせたナースコール選びのポイント
ナースコールシステムを導入する際、多くの施設がまず注目するのはコスト面ですが、選定の基準はそれだけではありません。施設の規模や利用者の特性に応じた機能性やアフターサービスなど、複数の観点から総合的に判断するようにしましょう。コスト
ナースコールにどこまでの機能を求めるかによって、必要な費用は大きく変動します。たとえば、小規模施設や費用を抑えたい場合には、呼出のみの簡便なシステムが適しています。一方で、大規模な病院や入居者数の多い施設では、業務効率を高める機能も兼ね備えたシステムが必要になるでしょう。スマートフォンやPBXと連携できるタイプを導入すれば、呼び出し対応のスピードを保ちながらコストの最適化も可能です。
機能
ナースコールはメーカーごとに特徴が異なります。たとえば、スマートフォンと連携してスタッフがどこにいても対応できる仕組みや、医療機器と連動して患者の状態変化を自動で知らせる機能などがあります。これらは看護師や介護職員の負担を減らすだけでなく、ケアサービスそのものの質を高めることにつながるのです。導入の際には施設の課題を整理し、どのような場面でどの機能が必要かを明確にすることが重要です。
フォロー体制
ナースコール導入時の検討で欠かせないのが、レスポンスの速さとアフターフォローの充実度です。ナースコールは患者や入居者の生命を守るライフラインであり、24時間365日止まることなく稼働し続ける必要があります。設備導入後に不具合や仕様変更の要望が発生することは少なくないため、メーカーや販売代理店の対応力は非常に重要です。問い合わせに対して迅速に応じ、的確なサポートを提供してくれるかどうかは、導入前に必ず確認しておきましょう。