ナースコールは患者と医療スタッフをつなぐ命綱であり、日常の安全を支える欠かせない設備です。しかし、コードの断線や通信システムの不具合など、思わぬ故障が起こることも少なくありません。この記事では、ナースコールが故障する原因、現場での対応法、そして予防のためのポイントを紹介します。
ナースコールが故障する原因とは?
ナースコールは患者の安全を守る命綱であるため、故障は施設全体に影響を及ぼします。実際には、ボタンやコードといった機器の物理的破損だけでなく、通信システムやアンテナなど周辺設備の不具合も多いです。ここでは、代表的なトラブルの要因を取り上げ、なぜ発生するのかを解説します。
呼び出しボタンやコードの物理的な破損
呼び出しボタンが押しても反応しないケースは、もっとも多いトラブルの一つです。接触不良や内部部品の劣化、断線が原因となり、信号が親機まで届かなくなります。とくに有線式の子機は、利用者が誤ってコードを強く引っ張ることがあり、その際に端子部分が損傷することもあります。また、配線は湿気やほこりで腐食しやすく、知らないうちに進行している場合も少なくありません。物理的破損は、交換すれば直ることが多いですが、放置すると他の部位へ波及する危険があります。
通信システムやアンテナの不具合
物理的な機器に異常がなくても、ナースコールが鳴らない場合はシステム側に原因が潜んでいる可能性があります。ワイヤレス式であれば、電波干渉やアンテナの故障によって、信号が届かなくなることがあります。コンクリート壁や金属製パーテーションなど、建物の構造が通信の妨げになる場合も珍しくありません。さらに、親機と子機をつなぐ制御装置やPBXの異常も考えられます。特定の部屋だけで問題が出るか、全体で起きているかを確認すれば切り分けが可能です。通信系の不具合は現場で判断が難しいため、早めに専門業者へ連絡することが重要です。
ナースコール故障時の対応方法
ナースコールが作動しないと、患者の呼出しが届かず重大なリスクが生じます。そのため、原因究明と同時に、看護師が現場でできる応急対応が欠かせません。ここでは、故障時にすぐ実施すべき対応を紹介します。代替手段を整えて患者の安全を守る
故障が起きた際に最優先すべきは、患者の安全確保です。巡回の回数を増やす、予備のナースコール子機を使用する、一時的にベルやブザーを設置するなど、状況に応じた代替手段を整えましょう。代替機器がすぐに使えない場合は、患者の近くで待機し、複数人で担当エリアを分担して見守る体制をとることも有効です。あらかじめシミュレーションを行い、トラブル時の行動をマニュアル化しておけば、混乱を防ぎ迅速な対応につながります。
患者への説明とスタッフ間の連携
設備トラブルが発生すると、患者は大きな不安を抱えます。そのため今は巡回を増やして対応しますので安心してくださいといった声かけで不安を和らげることが大切です。さらに、スタッフ全員に状況を共有し、誰がどの部屋を巡回するのか、どの連絡手段を優先するのかを明確にしましょう。インカムや無線機を活用して現在地を伝え合うと、緊急時にも即座に駆けつけられます。看護師一人の判断に任せず、チーム全体で役割を分担して動くことが安全につながります。
ナースコールの故障を予防するポイント
トラブルを未然に防げれば、患者の安心感を損なわずに済みます。ナースコールは日常的に使う設備だからこそ、点検や環境整備を怠らないことが肝心です。ここでは予防のための工夫を取り上げます。定期点検と部品交換の重要性
ナースコールは24時間稼働する設備のため、経年劣化は避けられません。とくにコードやコネクタ部分は摩耗や腐食が起こりやすく、定期的な専門点検で不具合の芽を摘むことが重要です。メーカーや工事業者による点検を受ければ、内部基盤や配線状態もチェックでき、重大な故障を防げます。点検を受けずに使用を続けると、ある日突然システム全体がダウンする危険性もあるため、半年から一年に一度は必ず点検を依頼しましょう。
使用環境と設備選びの工夫
故障を防ぐには、日常的な使い方や設置方法にも工夫が必要です。子機やボタンは専用バンドやホルダーで固定し、落下や強い引っ張りによる破損を防ぎましょう。また、有線タイプで故障が頻発する施設では、無線式ナースコールへの切り替えを検討するのも有効です。無線であればコードの断線リスクがなく、ベッド周りのレイアウトも自由度が増します。さらに、導入時には施設の構造を踏まえ、電波の届きやすさを考慮してアンテナを設置することも重要です。